2020年8月10日月曜日

「海と毒薬」から日本人と空気の関係を考える

遠藤周作:「海と毒薬」 

 この小説は太平洋戦争末期の日本陸軍と九州大学が起こした,捕虜を生体解剖するという悲惨な事件をモチーフにしたものです.この事件は,戦争中という異常な状態が引き起こしたのだと言えるのかもしれません.
 しかし,作者はこの事件が起きた理由を,日本人の罰は恐れるけれども罪は恐れないという習性に求めています.「赤信号,みんなで渡れば怖くない」という言葉があるように,日本人は個人の意思よりも全体の「空気」を優先することがあります.個人の罪の意識よりも、他人の眼や社会からの罰を恐れます.本作品での生体解剖を行う医師たちも組織の「空気」に拘束されてしまったといえるでしょう.この日本人の仲間内で醸成される「空気」について考察した本に山本七平さんの『「空気」の研究』があります.
 主人公の勝呂は上司に捕虜の生体解剖実験への協力を求められ,周りの「空気」と自分の良心の間で揺れ動き葛藤します.自分がもし勝呂の立場だったとしたら「空気」に流されずに自分の意思を貫くことができるだろうかと考えされます.

おすすめです.  
『「空気」の研究』とあわせていかがでしょうか.

山本七平,「空気の研究」,文春文庫,1983年 

 

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